佐久鯉料理(★★☆割烹「花月」,佐久)

美味しいお店

 善光寺参りから帰る途中、せっかくなので佐久に立ち寄って鯉料理を堪能。今までせいぜい地方旅館の夕食で出てきた「鯉の洗い」くらいしか知りませんでしたが、こんなに鯉が美味しいものとは知りませんでした。

 そもそも海から遠い佐久はかなり前から鯉を食べる習慣があったそうですが、明治になってドイツの鯉と掛け合わせてうまれた「佐久鯉」を養殖する様になってから東京,大阪へも出荷されて全国的に有名になったとのこと。低い水温で時間をかけて育てられるため鯉特有の泥臭さが無くて身が締まっている、というのが特徴だそう。

 そんな佐久で、鯉の養殖屋さんから(偶然)教えてもらった割烹「花月」。95年前に養殖組合ができると同時にこの「花月」も開かれたそうなので、老舗といって良いでしょう。
 外には大型バス用の駐車場があって、入口まわりは和建築っぽくまとめられ、広い玄関+帳場の先にはテーブル席用の大広間があって、多分2Fは個室が並び、中庭の池には錦鯉が泳ぐ…もしかしたら一時期は旅館もしていたのかな?という感じのつくり。正直言うと全体的にはちょっと草臥れた感もありますが、お蔭でこちらも身構えずに済んで良かったかも。

 料理は「雪・松・竹」のコース3種類と単品料理。今までほとんど鯉を食べたことが無いので、どうせなら「全種類食べたい!」ということで最も品数が多い「雪」コースにして、さらにそこから抜けていた「肝の一夜漬け」を単品で発注。ちなみに残念ながら、お酒は無し。

 事前予約無しでいきなり開店と同時に訪れてしまい、またそもそも8/15で台風の気配もあったから客はあまり来ないのでは?という思いもあったのかもしれませんが(私たちが訪れた時には他の客ゼロ。その後3組来ましたが)、どうやら厨房はバタバタの様子。
 本来は一品づつ、しかも決まった順番に出すべきところのハズですが、刺身にあたる「洗い」が全然出て来なくて、一方で他の料理は最初暫く待った後は次から次へ状態で、どんどん卓上に料理が並んでいく一方。まぁ昼だし、料亭じゃないし、でそれほど気にはしないのですが、でももうちょっと頑張ってもいいのでは?という気がちょっとだけしました。

 一方で、出てきた料理はどれも「とても美味」。正直こんなに鯉が美味しいとは思いませんでした。
 カリカリした食感が面白い「鱗煎餅(鱗の素揚げ,ここのオリジナルだそう)」に始まって、「旨煮」はちょっと甘みが強いけどご飯と一緒に食べるとピッタリだし、「揚げ物」はウロコのパリパリする食感込みで美味。有名な「鯉こく」は、まぁ美味しい味噌汁と言ってしまえばそれまでだけど、なんといっても美味しかったのは「あらい」と「塩焼き」。

 さすが「臭みの無さと身の締まり」を特徴とする佐久鯉だけあってか、「あらい」はコリコリ歯応えしっかりで、しかも全く臭み無し(女将さんに言われて気づいたのですが、普通酢味噌が当たり前ですが、ここは普通の魚と同じくワサビ醤油のみで、酢味噌の用意無し!。臭みが無いことに絶対の自信をもっているのでしょうね)。
 同じく切り身を使った「酢の物」は、酢で絞めたというよりも多少しんなりさせた感じで、結果食感は「シコシコ」に変わってキュウリの「パリパリ」とともに噛みしめて旨みがじわり。

 そして最も美味しいと感じたのが「塩焼き」。もちろん全く臭み,クセは無く、コリコリしていた身は火が通ってホロホロの白身に変わり、とても川魚とは思えないほどびっくりするくらい脂がのっていて、でもあっさり風味。実はこの「塩焼き」は「花」コースにしかない(もちろん単品ではあります)のですが、それに相応しい美味しさで、「花」を選んで良かったなぁ、と思いました。

 こんなに美味しい佐久鯉ですが、弱点は「骨」。中骨の鋭さもさることながら、小骨の多さ(しかもY字状に枝分かれしているので始末に悪い)には閉口です。不思議と焼くと気にならなくなるそうで「塩焼き」や「揚げ物」は問題なく、また「あらい」はしっかり骨を処理してくれているので(だから出てくるのが遅かったそう)大丈夫。一方で「旨煮」と「鯉こく」は厳しくて、特に「鯉こく」は味噌汁の中に沈んでしまって見えないため、もう素直に「出汁」と割り切って身を解して食べるのは諦めてしまいました…

 そんな感じで、ご飯と水菓子を含めると9品目、がっちり鯉尽くしでいただいたので、もうお腹一杯。「割烹」と名乗っているお店なのに申し訳ありませんが、お酒を飲みながらでは、とても全部は食べられそうにありません(酒に酔っての小骨も辛いしね)。
 強いて言えば外せるのは酢の物と鯉こくくらい(鯉こくの方が有名だけど、旨煮の方が美味しかったからなぁ…)。鱗煎餅があるから揚げ物は最悪ガマンするにしても、絶対に塩焼きは外せないし… なので、次来る時があっても、きっとお酒を飲まずに一所懸命「花」を食べてしまいそうな、気がします。

hisashi

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長年の間にあちこちの引き出しに少しずつ溜まったガラクタを ただただ、適当にひっくり返して並べてみました。

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