JAXA筑波宇宙センター(★★☆,筑波)前編;スペースドーム見学

博物館

 JAXA相模原キャンパスに引き続き、筑波宇宙センターを見学。展示品ではない本物の人工衛星を始めとして展示物の充実度合も、またそれから受けるワクワク感も相模原の数倍以上。ただ一方で「未来へのメッセージ発信が乏しい」という残念な点は同じ。これでいいのかなぁ…

 元東大の研究機関で「科学寄り」の色合いが強い「宇宙科学研究所」がある相模原キャンパスに対し、「宇宙の工学/商用利用」を目的とした「宇宙開発事業団」が母体となって作られた「筑波宇宙センター」は、大型ロケットや実用人工衛星などの開発・製作とともに、活動中のロケットや人工衛星,国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」などの運用を司るオペレーションセンターの役割を担っています。

 一般公開されているのは人工衛星などの展示を行っている「スペースドーム」がある見学エリアと、実務エリア内にある宇宙飛行士訓練施設および「きぼう」オペレーションセンターを見学する「ガイド付きツアー」の二つ。
 見学エリア側は予約不要・無料で、受付なども無く自由に入ってそのまま見学することができますが、実務エリア内に入るガイド付ツアーは事前予約制・有料で、かつ当日写真付身分証の提示が必要であり、明らかに相模原とは異なりセキュリティに気を使っている様子が伺えます。

 最初に向かった「スペースドーム」はかなり大きなガランドウの建物で、中には今までJAXAが打ち上げてきた人工衛星や探査機などでギッシリ。

 入口には差し渡し10m程度、北太平洋部分を切り取った大きな地球(1/10万スケール)の一部が置かれ、その上に日本の代表的な人工衛星や国際宇宙ステーションなどを浮かべて、どのヘンにどの様な衛星が回っているのかを立体的に示しています(ちなみに、この尺度だと静止衛星は建物の中には全然納まらず、道を挟んだ反対側まで行ってしまうとのこと。まぁ、高度は地球半径の約5.6倍以上だから、そんなもんか…)。
 そして奥には「きぼう」の実寸大模型があり、それ以外のスペースにある10数基の人工衛星や探査衛星も大半は実寸大のものが並べられています。

 並べられている人工衛星は、どんどん大型化していることもあってなかなかの迫力。しかもここにある衛星のいくつかはフライトモデル、つまり打ち上げ失敗などに備えてスペアとして作られた本番機の「使われなかった方」であり、そういう意味では「飛ばなかっただけ」の本物の人工衛星(まぁ、大抵の宇宙モノは手作り感が強く、また断熱フィルムなどでキラキラしているので「展示模型」と「本物」の見分けはつきにくいのだけど)。展示模型ではなく実機が見られる、というのはさすがJAXA直営(!)ならでは、というところ。

 一方の「中に入ってみよう!」って書かれている「きぼう」の実物大模型はちょっとガッカリ。船外実験プラットフォームやロボットアームなど、外見はなかなかカッコよくできているのですが、残念ながら中がショボ過ぎ。さすがに壁面には計器や装置類が組み込まれている様子が作られていますが(書割ではないだけマシかもしれないけれど)、それ以外には何もないただのガランドウ。確かに実験や作業など何もしていない時にはこの様な「整理された空間」なのかもしれませんが、せっかくならば何かの作業風景を模して装置類を一部引き出してある、とか、それらしい演出があっても良かったんじゃないかなぁ…

 …とまぁ、いずれにせよ、ここにあるのは日本が切り開いてきた「宇宙開発の歴史」を示すモノが詰まっているのは間違いなし。本物かどうかは別としても、宇宙関係でここまで充実しているミュージアムはココしかないでしょう、という意味でも非常に貴重。
 また、常時JAXA OB(多分)による解説ツアーが行われていて(こちらは無料,予約不要)、その道のプロだった人(多分)による説明を聞くこともでき、至れり尽くせりです(一般向けにかなり丁寧に説明してくれるので、”好き”な人にとっては結構冗長気味だけど)。

 ただ、やはりここも「モノ」がメイン。地球観測用の人工衛星のパートでは運用中の衛星から送ってきた情報や画像をその場で表示しながら「それから何が読み取れるか/何に役立っているか」などの解説もありますが、せいぜいそこまで。
 また仮に科学/技術ミュージアムを標榜するのであれば、この様な最新鋭の機械装置類を開発するために必要となる技術や知識体系などの解説や未来への展望などがあってしかるべし、と思うのですが、それらも殆ど無し。

 相模原でも感じたけれど、単なる「モノの展示」に留まらず、宇宙産業へ人々の期待と将来を担う人財と資金をひきつける様な強力なメッセージを発信して欲しいのになぁ、と強く思いつつ、次のガイドツアーへ。

hisashi

hisashi

長年の間にあちこちの引き出しに少しずつ溜まったガラクタを ただただ、適当にひっくり返して並べてみました。

関連記事

カレンダー

2024年4月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

過去の日記

TOP